第1章 ~春~ 4月
「エルヴィン団長!お久しぶりです!!」
「やあエル。久しぶりだね、元気だったかい?」
「元気に決まってんだろー?俺が面倒見てんだ」
「それは私のセリフです。師団長をわたしが面倒見てるんです!」
ここは憲兵団の師団長室。
私の上官ナイルの仕事部屋であり、私も1日の多くの時間を過ごす場所だ。
エルヴィン団長は先日強行された【ウォール・マリア奪還作戦】の報告で王都へ行った帰り、ここに寄ってくれた。
25万人の市民が動員された、とんでもない作戦。
どれだけ疲れているだろうかと心配したが……顔色は悪くないようだ。
「お待ちくださいね、お茶を入れて参ります」
「ありがとう。エルの入れる紅茶は美味しいからね」
「おいエルヴィン、俺の部下を口説くんじゃねぇ」
言い合う2人はなんだかんだ仲が良くて。微笑ましい光景にエルの頬は緩んだ。気苦労の多い2人には、こういう時間が必要なのだと思う。
その後
紅茶を片手に部屋へ戻ると、エルヴィンから意外なお誘いを受ける事となる。
「今日の夜、飲みに行くんだが一緒にどうだ?」
「え……私もご一緒して良いんですか??」
移動距離が長い為、エルヴィン団長は毎月開かれる会議の度に、この兵舎に泊まって行く。
事実上、彼にとって貴重な休暇だ。
私などが共に過ごして良いのだろうか……