第3章 ~秋~ 10月
「お前……それ以上煽るな」
「……それは、どういう意味ですか?」
繋いだ手はそのままに、エルは一歩踏み出した。
「もう少し頑張ったら……考えてくれますか?」
子供が親にすがるように。
空いている左手で、彼のジャケットを掴む。
知ってほしい。
私は貴方に会いたくて仕方がなかった。
こんな風に手を繋いでくれるなら……
あと少し、勇気を出してもいいですか?
「好きです」
乾いた路地で、私はついに言った。
「私は……貴方が好きです」
緊張で、声が震える。
緊張で、涙が出そうになる。
それを堪えようと、彼の手を強く握り。
ありふれた言葉しか言えないけれど。
せめて伝われと……彼の瞳をじっと見つめた。
「ずっと会いたかったから……もう少しだけ、一緒に居たい」
驚いたような。困惑したような。そんな彼の表情に、私は問う。
「ダメ……ですか?」
その瞬間。リヴァイは私の腰に手を回し、自分へと引き寄せた。
自然と重なる、互いの唇。
突然の出来事に驚くよりも、彼の柔らかく暖かな感触が嬉しくて。
私はそっと目を閉じた。