第3章 ~秋~ 10月
それから運ばれてきた料理は、すべて彼が注文した物。私は卓上に並べられたそれらを前に、思わず声を上げた。
「なんか……私の好きなものばっかり」
「そりゃ良かった」と答えるリヴァイは素気ないが、好きな人と食べる好きな食事。そんな事だけで嬉しい。
恋をするって楽しい事なんだな。
ふと、そう思った。
出会ってから重ねたやり取りも。今、こうして話している会話も。
何でもない、普通の事ばかり。
それでも、恋をすると心は跳ねる。
「リヴァイ兵士長は素敵ですね」
会話が途切れた瞬間、そんな言葉が口をついて出た。
「人の心に寄り添える、優しい人です」
それは、今まで交わした言葉から感じた事。
「でも、たまには自分にも優しくしてあげてください」
「自分に優しく?」
「息抜きは大切です。頑張った自分へ、ご褒美あげてほしいなって」
そこで、彼は手にしていたお酒を流し込んだ。
「ご褒美か。それは事足りている、だが……」
「だが?」
「……今日は食え。命令だ」
「なんですかそれ、私に太れと?」
「そうだな、今日は太れ。そして痩せろ。だらしねぇ女にはなるなよ」
横暴だけれど、何故か憎めなくて。
思わず笑ってしまう私は可笑しいのだろうか?
楽しい時間は、あっという間に過ぎてゆく……