第3章 ~秋~ 10月
そして先月
仕事終わりに食事に誘って頂いた。と言っても2人きりではない。初めて会った、あの時のように4人で。
でも、二軒目へ消えるナイルとエルヴィンを見送った後。また帰り道をリヴァイと2人で歩いた。
その際、不覚にもつまずいた所を彼が支えてくれて……
「どんくせぇな」
そう言って、私の手を握った。
短い帰り道を、彼の体温を感じながら歩いた。
翌日、何も言われていないのに。私は本を差し出した。『また2人で会いたい』と、今までで一番短い手紙を挟んで。
少し露骨過ぎたかな?とか
そんな事を考えたりもする。
せめて恋愛経験があればなぁ……なんて。過去の記憶を辿ってみても、参考になりそうな物は見つからなくて。
探り探り、前に進むしかないのだが……
「お前、リヴァイが好きなのか?」
ふと、窓の外を見ていた私に声が掛けられた。今日ここを訪れる人物の話題だ。
「……ずいぶん不躾に聞くんですね」
「毎回別れ際にイチャイチャされたら、見てるこっちが困るんだよ」
「イチャイチャなんかしてません!本をお貸ししてるだけです」
「そう照れるなって、面白いじゃねぇか。リヴァイを選ぶ辺りがお前らしい」
それからナイルが一つだけ釘をさした。
「誰を好きになろうとお前の勝手だ。だがあいつは調査兵、それだけは肝に命じておけ」
言いたいことは分かる。
絶望的な死亡率は、兵士でなくても耳に入る程。
そして、それを口にしたナイルの表情は上官というよりも……
「やはり師団長は、父親みたいですね」
「ああそうだ、俺はお前を預かってる身だからな。正直お前に頑張って欲しい気持ちと、内地の男と上手くいって欲しいって気持ちが半々だ」