第3章 ~秋~ 10月
季節は廻って肌寒くなった。
いわゆる落葉樹は色を変え、葉を落とす時を今か今かと待っている。
エルは執務室の窓からその姿を眺め、思考を巡らせていた。
夏
本を貸す約束をした翌朝
緊張しながら渡した1冊の本。
そのまま渡すのもなんだから、小さな紙袋に入れた。
気の利いた差し入れでも一緒に入れられたら良いのだが、生憎そんな物は持ち合わせていない。
仕方がないので、ペンを取る。
食事のお礼と、楽しかった事。くれぐれも体調に気をつけて欲しい。と綴り、本の最後のページに挟んだ。
最初のページじゃつまらないと思ったから。
今日の出来事を、忘れた頃に読んでほしい。
翌月、リヴァイは本を片手に姿を見せた。
「面白かった」と話す彼は、お礼だと言って私に紅茶を差し出した。受け取る時、わずかに指同士が触れる。
たったそれだけの事で熱を帯びる自分は、あまりにも単純で。
単純な私は、他にもいい本はあるか?との問いに即答する。
「あります」と。
そして再びペンを取る。
返ってきた本からは手紙は消えていた。きっと、受け取ってくれたのだと思う。
さっそく頂いた紅茶は美味しくて、大切に飲む事。今回は仕事が立て込んで、あまり話せなかった事。次はもう少しお話出来たら嬉しい事。
不審に思われない程度に、自分の気持ちを綴って。
今回はどうしようかと思い……
最初のページに挟んだ。
話せなかった分、
この気持ちを早く伝えたかったから。