第2章 ~夏~ 7月
「こんにちはー。まだやってますか?」
昼食を取るには少し遅い時間。
店のドアを押し中を伺えば、お客さんの姿はまばらだ。思い切って声を掛けると、店主が厨房から顔を出した。
「エルちゃんいらっしゃい!まだ大丈夫だよ、今日はえらい遅いねぇ」
「ありがとうございます。さっきまで仕事だったんですよ」
店主に声をかけながら、ドアを片手で支えリヴァイを店内へ通した。その時……
「おお!ついに彼氏を連れてきたか」
「ちょっ……やめてください!そんなんじゃありません!」
「恥ずかしがる事はないよ、デートにウチの店使って貰えるなんてありがたいねぇ」
「いや、だからですね……」
なんやかんやと喋りつつ、意気揚々と案内されたのは窓際の席。差し込む日の光りが心地よい、この店で一番良い席だ。
「えっと、お食事どれにします?メニューはこれです」
「お前の気に入りはどれだ?」
「そうですね。やはりシチューですかね」
「ならそれで」とのリヴァイの返答に、本当に何でも良いんだな。なんて事を思いながらシチューのセットを2つ頼んだ。私は昼食を軽くつまんでいたので、量は少なめで。
「しかし……想像以上に親しそうだな」
厨房へ消えゆく店主を目で追いながら、リヴァイが口を開いた。
「そうですか?でも良くして頂いています」
「お前は人当たりが良いからな。にしては男っ気が無いようだが」
「全くその通りで、返す言葉もありません」
呆れたようにこちらに視線を寄こすリヴァイを見返しながら……
『じゃあ、リヴァイ兵士長にはそういうお相手いるんですか?』
そんな質問が浮かんだ。
今なら、聞けるかもしれない。
「あのっ……」
口を開いた時……
「エルちゃん!」
可愛らしい声で、名前を呼ばれた。