第2章 ~夏~ 7月
リヴァイに連れられ部屋を出た後。
『30分後に兵舎前に伺いますね!』
エルはそう言い残し、自室へ急いだ。
数少ない私服を前に、どれにしようか思い悩む。プライベートであっても、リヴァイの方が立場が上だ。あまりカジュアルな服装はダメだろう。
手に取ったのは、シンプルな白いシャツと無地のスカート。失礼に当たらないよう、薄めの化粧を施していく。
そして、鏡に映った自分は悪くはない。だが……
無難だ。ものすごく。
「まぁ、しょうがないよね」
ここは、シンプルに纏めて行くべきだろう。
集合10分前
エルはバッグを手に取り、部屋を後にした。
はやる気持ちを抑えながら廊下を、階段を、そして玄関を抜け外へ踏み出した時だ。
「おい」
「うわッ!!あれ……なぜここに?」
エルの死角。玄関の真横にリヴァイは立っていた。しかし待ち合わせは、彼の泊まる男子棟の前だった筈だ。
「もしかして、お待たせしてしまいましたか?」
「気にするな。今来たばかりだ」
これは迎えに来てくれたのかな?なんて思うと、少しの距離でも嬉しくて。
リヴァイを見やれば、彼も私服に着替えていた。袖を通した黒のジャケットがとても良く似合っている。
同じようにこちらを伺っていた彼と、ふいに視線が合う。
「ジャケットお似合いですね」
「……お前も悪くない」
褒めてみれば視線を落とすリヴァイ。少し恥ずかしそうなその姿は、なんだか可愛い。
「行きましょう」と発した言葉は、自分でも分かる程に踊っていて。
踏み出した一歩は、想像以上に軽かった。