第2章 ~夏~ 7月
「おいおい。もうすぐあいつ等が来るってのに、酷い顔だな」
「ただの寝不足です。お気になさらず」
午後1時半
エルは目の前の上官へ、うつろな目を向けた。
結局。変な夢をみてしまったせいで、あの後眠る事は出来なかった。
昼食は少量で済ませてみたものの、昼下がりのこの時間。猛烈な睡魔がエルを襲う。
「お前がそんな顔してたら、俺が文句言われんだよ。部下の管理がなってないってな」
「団長なら優しく諭すタイプじゃないですか?」
「エルヴィンじゃねぇ、リヴァイの方だ。あいつは細かいからな」
『リヴァイ』という名前に、一瞬身体が反応した。
今日で、彼に会うのは4度目になる。
春先
リヴァイを紹介されてから、彼は毎月の会議に合わせてここへ立ち寄るようになった。
初めて会った時はろくな会話も出来なかったが、2度目には紅茶が好きな事を知った。
入れたてを振る舞えば「悪くない」と彼は言う。それはリヴァイ流の『褒め言葉』だと団長が教えてくれた。
3度目は小さな共通点が見つかった。僅かに見えた彼の懐中時計が、私と同じ物だったのだ。
「同じですね」上着の内側からそれ取り出し、リヴァイに見せてみる。一瞬固まった彼の姿に、どうでも良い話だったな。と後悔するも……
「あぁ、同じだな」そう言って少しだけ笑い。私の頭を撫でた。
ぶっきらぼうな彼の優しさに触れ、もっと笑った顔を見たいと思った。
初めて会った、あの日に感じた暖かいもの。
それは会う度、明確な形を織り成してゆく。
エルは確実に、リヴァイの人柄に惹かれていた。