第1章 ~春~ 4月
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「リヴァイ、昨晩の食事は楽しかっただろう」
「……なんの事だ?」
豪華な装飾に、立派な革張りのシート。
悪趣味な馬車に揺られながら、リヴァイは目の前の男性を睨んだ。
「エルの事だよ。お前に会わせたかったんだ」
『会わせたかった』その意味を思案する。
ガラガラと石畳の上を駆ける音が、車内を包んだ。
「会わせて、何になる」
「お前は内地の情勢を知るべきだし、彼女の話は良い息抜きになると思った。お前は……あまりにも働き過ぎだ」
「そうかよ」
窓から外を伺えば、街の人々の穏やかな表情が見て取れる。
昨夜出会ったエルもまた、同じような顔をしていた。
……内地は幾分平和だ
調査兵団が拠点を置くトロスト区は今、街全体に異様な空気がはびこっている。
強行されたシガンシナ奪還作戦
大通りを埋め尽くす人々の列
地獄へ続く それを見送った街
正直、エルヴィンの言うように少し気が滅入っていた。
泣き叫び 命乞いする市民
むせ返るような血と汗の匂い
視界は……赤く染まった