第2章 【Forever mine〜after story〜】
恵麻のお母さんと話してる間、
大人しく座って待っていたわんちゃん。
恵麻に似て…
キメドコロを外さない嗅覚をもってんのか?
そういえば、どことなく
恵麻に似てる気がする…。
そう思うと
なんだか無性に可愛く思えてきて。
「かわいくてお利口さんですね。
柴犬ですか?」
「あ、違うの違うの。
近所のお宅が困ってて
譲り受けた雑種なんです。
健康だけが取り柄で。笑」
「ふふっ。」
恵麻も…
前に、同じようなこと言ってたな。
まだ逢ってもいないのに
これだけ愛しさを募らせてくれるなんて
本当にキミってヒトは…
何年たっても
キミには敵う気がしないよ……。
「あ、ちょっと、繋いできますね?」
ひと言断って、
恵麻のお母さんは
わんちゃんを連れて行って。
「ほら、うーちゃん、お水飲んでね。」
あのわんちゃん、
うーちゃんっていうんだ……。
恵麻…
キミってやつはほんとに―――。
「あ、増田さん。
娘に逢いに…来て下さったんですよね?」
「はい。」
「恵麻は今、
病院で看護師をしてるんです。
不規則な仕事だから…
ちょっと連絡入れてみますね。
外じゃ寒いですし、上がって下さい。」
「あっ……いや、えっと…。」
「ふふっ。大丈夫よ。
主人は仕事だからまだ帰ってこないわ。
緊張しないで、大丈夫。」
恵麻の勘がいいのは…
お母さん譲りなのかな。
緊張しないで大丈夫とは言われたものの、
やっぱり緊張せずにはいられないもので…
ドキドキしながら上がると
大きな吹き抜けの先に
部屋のドアが幾つか見えて。
どこが恵麻の部屋だったのかな…。
そんな想像にすら鼓動が高鳴る……。
「増田さん、こちらのソファにどうぞ。
あ、コーヒー大丈夫ですか?」
「すいません。
はい、コーヒー大好きです。」
その言葉のあとに
"恵麻が淹れてくれたコーヒーが特に…"
なんて心のなかで付け足したオレは
惚け散らかしてると自分でも、思う。
だけど、8年間封じ込めてきた想いなんだ。
そうなっても仕方ないよな…
そう自分を甘やかしてたら
コーヒーの香ばしい薫りが
鼻を掠めて―――。