第1章 【Forever mine:増田貴久】
シゲはめんどくさそうな口振りのクセに
ツマミや酒を買って帰ってきてくれるし、
最初は忙しいアピールするクセに
最終的にはオレの酒に付き合ってくれます。
ぶっきらぼうな優しさまでキミに似ていて
なんだかとても居心地がいいんだ。
だから、僕は大丈夫です。
失くしたものを越える強さを
キミがくれたから。
キミを失くした痛みを
何も感じなくなるくらいなら
この痛みを抱いて眠る方が
きっとずっと
僕は幸せなんだ―――。
*
「シゲ、オレ。」
「早っ! 俺も着いたの
今しがただったけどな!w
まぁいいや、上がれよ。笑」
「ねぇ、シゲ、
これ観ていい?」
「俺もやることあるし
一緒には観れねーけど、
テレビは自由に使っていいよ。
俺はこっちでパソコンやってるから。」
「うん、ありがと。」
「あ、酒かなんか要る?」
「要らない。ライブDVD観るから。」
そう言いながらディスクを準備し
メモとペンを準備して構える。
まっすーが頻繁に遊びに
来るようになって思うのは
まっすーってホントに
コンサートが好きなんだよな……。
その為にはどんな努力も厭わないし、
それに対する熱量が半端ない。
しかも、何がスゴいって
それを本人は努力だと思ってないところだ。
勿論以前からそうだとは思ってたけど、
正直ここまでとはね……。
だから、まっすーの夢に協力するために
潔くひいた彼女の気持ちが理解できすぎて
今更ながら俺は一人で
苦しい想いをしていたりもする……。
「……あ、DVDってコブクロさんの?」
「うん。コブクロさんがさ、
活動休止したの覚えてる?」
「勿論。」
「これね、
休止明けの15周年ツアーのDVDなの。
そのとき2人が言ってたんだ。
休む前の自分達は
これをやるしかない、こうあるべきだと
全てを決めつけて進んでたんだって。」
「……ん? どっかで聞いた話だなぁ。笑」
「あ。やっぱ、
シゲもそう思う?笑
でもね、休止して
ただの"黒田俊介"と"小渕健太郎"に戻って。
そのあとコブクロが再スタートして、
お互いリハビリのように歌っていく中で、
ファンのコ達の反応を受けて
“どんな自分たちでもいいんだ”
って思える、コブクロになれたんだって。」