第1章 【Forever mine:増田貴久】
―――そんな私たちの元にも
約束の日は無常にも近づいてきて。
私は前乗りして金曜の夜から実家に泊まり、
土曜日の早朝、待ち合わせをしている彼を迎えに
母親に借りた車で空港へと向かう。
到着口で落ち合い、運転席に乗り込もうと
ドアに手をかけたそのとき、
フッ…と
彼の手が重ね合わせられる。
「…運転、オレがしてもいい?
シゲ美、ブレーキんとき"ぐっぐぅーーん"
ってなりそう。笑」
「ヤバい、バレてる。笑」
「笑 まぁ、それは冗談として。
今日はデートだから。……ね?」
そう言い残して
スマートな動きで車に乗り込む彼。
窓を内側からコンコンと叩かれ、
早く乗るよう促される私。
やっぱり、
来ちゃダメだったかも………。
こんな思い出が今日1日で積み重なるとしたら
別れの日を想像するだけでツラすぎる……。
「どこか行きたいとこ、あったりする?」
「恵麻ちゃんの実家と通学路と
恵麻の家のお墓かな!」
「わかった。ナビするね。」
*
「えっ…、
お前ってもしかして……お嬢様?」
「そういうわけじゃないけど…、
父親は仕事人間だったかも。」
「……まさかだけどさ、
お前も中学受験した人?」
「うん。……何で?」
「ヤバい! 益々シゲに見えてきた!笑」
「なにそれ。笑」
「恵麻は…次、シゲみたいなヤツを選んだら
幸せになれるのかもな…。
それならオレもギリ、安心だわ。」
「……何でそう思うの?」
「共通点も多いし、考え方も多分、
似てるんだよ。何となくだけど…。」
「じゃあ…、ダメでしょ。笑」
「…ダメなんだ。」
「わかんないけど…、人間も所詮動物なんだから。
細胞レベルで恋、しなきゃ。笑
自分とは真逆な遺伝子の方が
強い子孫残せるでしょ?
似てたらすぐに親しくなれたりして
相性良く感じたりするかもしれないけど、
……それは錯覚よ。
だから理解できないところがある
くらいの人がいいのよ、きっと。」
「おっ! ブルゾン恵麻?w
となると、やっぱオレかぁ♡
まぁ、オレレベルになると?
そうそういないから大変だね!
恵麻ちゃんは。笑」
「………ほんとだよ。」
「……泣き虫。」
「そっちこそ…。」
「………見んな、ばかw」