第1章 【Forever mine:増田貴久】
「……ごめん。困らせること言って…。」
「ううん、……わかるから。
でも、泣かせちゃったのはメイクさん失格!笑」
「確かに!w」
ファンデーションを取りに
リビングに戻る彼。
こんな他愛もないやり取りが、
来週には出来なくなる。
辛くても、そろそろ
現実を受け止めないと。
私だけじゃない、
彼も一緒に………。
*
大切に過ごしたいと
思えば思うほど
何をしたらいいのか
何を伝えたらいいのか
わからなくて…。
他愛もない会話は徐々に減って
沈黙の時間が増えていく。
でも、
淋しい沈黙じゃない。
同じ気持ちでいるのが
わかっているから。
私たちの願いはただ1つ。
ただ、
隣に居たい。
それなのに、気持ちとは裏腹に
夜の帳は下りて、朝を迎え
また1日が淡々と過ぎていく…。
あの日から、体を重ねていない私たちは
いつもと変わらない日常を過ごし、
ベッドに一緒に入って。
彼が私を抱きしめ、
啄むようにキスを交わし、
首筋から鎖骨を伝って蕾の手前まで
朱を散らせる彼……。
私のデコルテには薄くなりかけたモノから
鮮やかなモノまで濃淡鮮やかに咲き乱れている。
キスマークなんて
子どもっぽいって言ってたのに……。
だけど、彼の行為から
彼の想いがダイレクトに突き刺さる。
自分が散らせたシルシを
満足そうに辿って―――…。
「綺麗だよ、
オレだけの恵麻…。」
そう呟きながら
愛おしそうに
抱き締めて眠りにつく。
「……寝た?」
「………うん。」
「…嘘じゃんw」
「……ふふっ。」
「ごめん、オレ……
自分が思ってたよりずっと、意気地無しみたい。
お前のこと、抱けないんだ。
怖くて…。
終わりが近づきそうな気がして。
もしかして、不安にさせてないかなって…。」
「…そんなこと気にしてたの?笑
こんなに大切にされてるのに
不安になるわけないよ。
私、幸せだよ、凄く。」
「オレは…ある意味不幸だよ。
もうお前以外愛せる自信、ないわ。苦笑」
「……幸せで不幸せ?
最高の殺し文句。」
「じゃあ……、一緒に死ぬ?
なんてね、冗談…。」
『それも悪くないね。』
脳裏に浮かんだ言葉をかき消すように
溺れるような、キスを―――…。