第5章 【It's you:加藤成亮】
「……久しぶり、だね。」
「うん……。」
数か月ぶりに逢った彼女は
ピアスも、髪色も…自然なものになっていて。
「その髪色、綺麗だね。……似合ってる。」
「ありがとう。
恥ずかしいけど……嬉しいな…。」
ふ…、と。
彼女の細い指が
オレの左手の薬指に触れて―――。
「……ごめんなさい。。」
「……言ったろ?
俺の生活が変わったとしても…
恵麻は罪の意識を感じなくていいって。」
優しく微笑んだ彼は
私の髪を愛おしそうに撫でて―――。
「だから、恵麻もね?
彼を忘れなきゃいけないとか、
俺を好きにならなきゃいけないとか、
そんな余計なことは考えなくていいから。」
「余計なこと…。」
「うん、そうだよ。今のキミには…
自分のコトを大切に想うこと以外は
全て、余計なことだから。
俺が勝手に恵麻を忘れられなくて。
勝手に側に居たいだけなんだから。
見返りなんて求めてないから、ね?」
「でも、そんなに大切にしてもらっても
どうしたらいいか……私、わからないよ。
…愛し方も愛され方も
もう、わからなくて……。」
震えていた私の手に
そっと手を重ね合わせて―――。
「いいよ、そんなもの
今はわからなくても。
恵麻の信じられる愛情を
これから探していけばいいんだから。」
「信じられる…愛情?」
「うん。こどもの頃は、与えられる愛を
“これが愛というものなんだな”
と思うだろ?
だけど、自分の欲しかった愛や信じられる愛が
与えられた愛とイコールとは限らない。
子どもからしたらそんなの要らないよ!
っていう下手クソな愛情表現なのに、
こんなに愛してきたのに!
って勝手に恩着せられちゃ…
そりゃ、たまんねぇわな。苦笑」
「……愛は…」
「「最高の奉仕。」」
「笑。 高校生の頃、
よく一緒に読んだよね。」
「俺、太宰治にハマってたからなぁ…。
厨二病だったのかもだけど。w
とはいえ…、
よく文句も言わず
付き合ってくれてたよな。笑」
「ふふっ。 恋は相手の長所に惹かれて、
愛は相手の短所を受け入れること、でしょ?」
「……うん。高校生の頃は
キミに恋してたかもしれないけど、
今は、違うから。
俺はどうやら、キミのいない世界は
生きられないみたい…。」