第5章 【It's you:加藤成亮】
「ごめんね、手荒な真似して…。」
「……どういう、つもり?」
「キミを……ほっとけなかった。」
「…頼んでないよ、そんなこと。」
「ふふっ。……知ってる。キミは昔から
人に頼ることが苦手だったよね…。
ガキだった俺にはそんな君の強がりの
裏の気持ちなんか、わかるはずもなくて…
独りよがりな彼氏だったから
俺は振られて当然だったと、思うよ。」
「……振られて当然?」
「キミに、振られたよ。
クリスマスの前に…。」
「それは……。
あのとき、加藤くんには他に好きな人がいると…
そう思ってたんだけど…、違った?」
「もしかして……それで、身を引いた…?」
「……。」
「……違わないよ。好きな人、いた。
ていうか…いるよ。今も……。
あの頃も今も、俺が大切にしたいのは
杉原さんなんだ……。」
「結婚指輪しながら、
そんなこと言うなんて……
加藤くんらしくないね。苦笑」
「……俺らしいって、なに?
俺は…、最低なオトコだよ……。」
「……加藤くんが最低なら…私は、
私を表す言葉が見つけられないよ。。」
「あの頃も今も、
キミのことが大切だって言ったけど
……俺は、結婚してる。
だけど…、いつだって
俺の心を占めているのは…キミなんだ……。
これが、どんなに最低なことか…わかる?
彼女と会話しながら
キミだったらこう答えるかなとか考えるし
キミを想いながら、
カラダだって重ねる。
俺も、キミを忘れようと努力はしたんだ。
だけど……、できなくて…。」
忘れようと努力するということは
忘れられない事実を証明してるより他ない
って気付いたときの絶望感は…
今でも鮮明に覚えている。。
「……こんな自分、
見られたくなかったな。
加藤君にだけは…。」
悲しそうな笑顔を浮かべた
そのときのキミは
思い出の中の彼女みたいで―――。
2度目の再会は…
キミを探し求めてやっと逢えた僕と
偶然、見つけられてしまったキミとじゃ
熱量があまりに違いすぎて―――…
ごめんね、きっと、キミの心を
傷つけてしまったね…。
「過去に何があったかは…
俺からは聞かないから。
話したくなければ、
無理に話す必要はないよ。
だけど……ただ、
そばにいてもいい?」