第5章 【It's you:加藤成亮】
キミを見かけてからというもの…
唯一の手掛かりのゲームセンターに
息子を連れて行った時間帯に
訪れることが日課になっていて。
人懐こくない俺は、
営業職が余り好きではなかったけれど
時間をある程度自由に使えることに
初めて感謝していたりする。
でも、そんな偶然、
何度もそう重なるものでもなくて。
ゲームセンターに通い詰めて
2週間が経とうとしていたそのとき…
彼女は、居た―――。
自分の意志で探し求めていたはずが、
実際にキミと対峙すると
動揺を隠せない意気地なしの自分に呆れる。
だけど、もう、
プライドが邪魔していた
あの頃の俺とは違うから。
俺の全てをなげうってでも
キミを守りたくて――。
俺は、勇気を振り絞って
恵麻に近づいた。
「……久しぶり。」
自分では精いっぱいの笑顔を
取り繕って、声をかける。
ドクドクと
鼓動がうるさくて。
唾を飲み込む音さえ
耳障りで。
そんな俺を、
冷めた目で
横目に見たキミは…
「……どちらさまですか?」
一言、そう呟いて
視線を逸らせた……。
「杉原さん……だよね?
「……」
「……ねぇ。
あれから…何があったの……?
キミには…似合わないよ。
たくさんのピアスも。その、髪色も……。」
「……いきなり何ですか?
私は、アナタのこと…
知らないって言ってるでしょ?!」
思いの外彼女の口から
大きく出てしまった声が響いて、
外野からちらちらと視線を送られる。
「ここじゃ、目立ちすぎる……。
ちょっと、場所を変えよう。」
パシッ!
そう、提案してキミの腕を掴んだ
俺の手が払われた。
「……ほっといてってば!!
私が今、何をしてても…
アナタには、関係ないでしょ?」
「関係……なくない。
関係ない関係を…やめにしたくて。
だから、俺は
2週間前にここで見かけたあと
キミを、探してたんだ…。」
「……なに?それ。
都合のいいことばっかり…。」
「……ごめん、ちょっと、来て。」
「…っ!離してってば!」
「離せない!
もう、離さないって決めて…
キミを、探してたんだから……。」
恵麻の腕を掴んで
外へ連れ出し、
強引に社用車に押し込める。