第5章 【It's you:加藤成亮】
「お父さん!もう1回!!」
「お前は…本当に負けず嫌いだな…笑」
「……負けるのが好きな人なんているの?」
「……あぁ、そうだよな。
お前は、いい男になるよ。きっと。」
「お前は…って、なに?
お父さんはいい男じゃないの?」
「俺は…、
いい男なんかじゃ、ないよ。」
「ふぅん?じゃぁ、頑張ればいいのに。
へんなの!」
「……。」
子供は、
痛いトコを突いてくる。。
しがらみだらけの大人とは違って、
本当に大切なものだけを大切にして、
本当に欲しいものだけをねだって、
本当にやりたいことだけを考えて行動する。
だから、
失礼なことだってするし、
道に外れたことだってやりかねなくて。
だけど、
だからこそ、、
脅威で―――。
「……なぁ、祐也。
もし、お前の好きなお菓子が2つあるとして。
どっちか1個全部貰うのと…
半分ずつ、どっちも貰えるの
どっちがいい…?」
「うーーん、、1個全部!!」
「……なんで?どっちも、好きなんだよ?
どっちも、欲しくないの?」
「うーーん、、どっちも欲しいけど…
でも、一番好きなものを
半分しか食べられないなら、、
もう1個の半分は諦める!!
それくらい僕はじゃがりこが好きだよ!
え、なに?お父さん、
もしかして買ってくれるの?」
「……お前には負けたわ。。
なんなら2個買ってやらぁ!w」
*
「え?! 何、
祐也、同じの2個でいいの…?
それに、同じじゃがりこでも
赤いのとか緑のとかあるよ?」
「もう、しつこいな!笑
僕は同じの2個が、いいの!!」
「別にいいけど……飽きねぇの?」
「お父さんはわかってないなぁ。笑
飽きるかどうかは…
とことんやってみなきゃわからないでしょ?
だから、僕はとことん
好きなものだけ食べたいの。
とことんやった人だけが
その気持ちが本物かどうかを知る権利がある
ってお母さんが言ってたよ。」
「そっか……末恐ろしいな、祐也は。。」
そう、カノジョは
見た目だけの女性ではなく
聡明な女性で。
俺には勿体無いくらいの女性なんだ。
だから、きっと……、
俺の嘘なんか端から見抜いたうえで、
騙されていてくれているんだ―――……。