第5章 【It's you:加藤成亮】
「おーーい!行くぞー!」
「待って、お父さん!」
「いってらっしゃい。
成亮さん、お休みの日にありがとうございます。
祐也、ちゃんと…
お父さんの言うこと聞いてね。」
「わかってるよ!!」
「こら!言ってるそばから飛び出すな!」
「ごめんなさい。。」
「落ち込まなくていいから。笑
わかってくれればいいんだよ、それで。」
「ホントに、やんちゃ盛りで…。
手を焼くと思いますけど、
よろしくお願いします。」
「ん、行ってくるよ。
たまには一人でゆっくり過ごしてて。」
「ありがとうございます。」
そう言って、出がけにキスをして、
息子にからかわれながら家を出る。
何でもない…
俺の嘘で塗り固められた日常だ―――。
ゲームセンターに着くと
目を輝かせながら息子が物色していて。
その様子に目を細めていると…。
一人の女性を
俺の視界が捉えて―――。
「……恵麻…?」
けれども、俺の知っている恵麻とは
明らかに風貌の異なるその女性に
戸惑いを隠せない。。
「お父さーん!!」
「ごめんごめん。
どれからするか決まったか?」
「うん!」
ゲームマシンにコインを入れてもなお、
俺の意識はその女性に釘付けで。
見るからに軽薄そうなオトコが
彼女に声をかける。
「おねぇさん、可愛いね。1人?」
「……あなた次第かな。」
「言ってくれんじゃんw あ、名前いちお教えてよ。
何でもいいけど…ないと、不便だから。
オレ、ジュン。]
「いちお、ね。じゃあ、サキ。」
「じゃあって、何よw」
「じゃあは、じゃあでしょ。
どっか、連れてってくれるの?」
「あぁ、うん。
まぁ…天国、的な?w」
「………ほんとに?
下手クソじゃ満足できないよ、私。」
「言うねぇ…。笑 多分、そこそこ…、
満足させてあげられる。と、思うよ。」
「……ふーん?
あなたの顔、嫌いじゃないし…いいよ。」
そのまま、
その軽薄そうなオトコに肩を抱かれて
消えていった女性…。
キミは、サキなんかじゃ…ない。
キミは、恵麻……だろ。。
目を逸らしたいほどの現実に
吐き気がした―――。
俺は、何故…
キミの手を
離してしまったんだろう。
あの時も。
あの時だって。。