第5章 トラウマ
開館時間になると書庫は打って変わって忙しくなる。
閲覧室のカウンター端末からアラームと共におびただしい量の帳票が印刷されてきて、てんやわんや。
朝、早めにきておいて正解だったと心底思う。
何度も教えてもらったので、迷うこともなくリクエストに応えることができていた。
『光、ちょっと一番上の!届かへんのよー』
光「じゃあ代わりにこれ頼む」
『おけ!』
光から受け取り書架へ。
入れ替わりで郁が光に聞く。
郁「ごめん手塚、756って何番書架!?」
光「工芸30番台!お前いい加減にしろよ、工芸さっきも訊いただろう!?」
書庫内に飛び交うのは郁の質問の声と光の苛立った声だけ。