第3章 拝命
わたしは横嶺司令と目を合わせると、司令は優しく微笑んだ。
その笑顔を見て頷き、3人を見る。
『それは・・・“日野の悪夢”のことです。』
はっと、何かを思い出したかのように堂上教官がわたしを見る。
『日野の悪夢には、生き残りがいます。当時館長をしていた稲嶺司令と……わたしです。』
稲「実は、香さんのご両親は日野図書館の職員だったんです。香さんは3歳だったので一緒に図書館についてきて、閲覧室で手の空いた職員の人に面倒を見てもらって過ごしていました。」
『いろんな記憶は朧げなんですけと、あの日のことだけははっきり覚えてるんです。父と母がわたしを守るように倒れていて、声も出せなかったわたしを司令は見つけてくれて助けてくれました。そのときに、足を…』
玄「じゃあ佐々木の両親は…」
稲「…助かりませんでした」
篤「佐々木」
堂上教官が手に触れる。
力がふっと抜けて、視線を手に向けると、無意識にきつく握っていたみたいで爪痕が残っていた。