第2章 郁の王子様
わたしは誰もいなくなった医務室で顔を手でおおった。
『ナニコレ…心臓張り裂けそう…!』
柔らかい表情、
優しく触れる手、
そしてなにより…わたしのことを案じてくれたこと。
こんなのかすり傷みたいなものなのに。
こんなにもドキドキするなんて、初めてで、なんかどうしていいかもわかんない。
きっと、アレだ。
見たことない教官ばっかりでびっくりしてるだけなのかも。
『そう、それやね、そういうことにしておこう』
よし、っと気合を入れて立ち上がると傷がピリッと痛む。
痛むと同時に教官のあの笑顔が浮かんで、ぷしゅーっと湯気が出た気がして
『ダメやな…これはしばらく おさまりそうにもない…』
この気持ちは何となくなんなのか分かったけど、とりあえず分からない…と言うことにしておこう。
パタパタと手で顔を仰ぎながら天井を眺めた。