第2章 そういうところが好きじゃないんだ
伊豆くんがまっすぐに私を見据える。私は彼から目を離すことができなかった。頭の中はまだ混乱している。伊豆くんが私をずっと好きだったこと、自分の恥ずかしいところを何度も見られていたこと、伊豆くんがそんな私に欲情しきっていたこと…。
伊豆くんは私の目の前まで迫ると、ぴたりと止まった。
「だが桃浜が嫌なら、もう触らない。もう、覗きもしない。オレのことを嫌いにならないで欲しいからな…」
ああ、彼はこんな、寂しがりの子どもみたいな目をできる人だったのか。
わからない。自分がどうしたらいいのかわからない。彼のことは決して好きではなかった。でも今は、どこか憎めない気持ちを抱いている。そして何よりも
「熱い…」
「え?なんだって桃浜?」
体が火照っている。伊豆くんは、私の行為を何度も覗き見して、その度にひとりで慰めたという。女っけがなく、野球のことしか考えていないと思っていた彼のそんな浅ましい姿を想像すると、私の心臓は高鳴り、下半身は熱くなる。
「桃浜…?」
伊豆くんが私を見る。怯えるような、でもどこか期待するような目。飄々としてとらえどころのない普段の姿からは考えつかない。彼にそんな表情をさせているのは、他の誰でもない、私なのだ…。
「あつ、い…」
「桃浜?」
「熱いの…。伊豆くん、抱きしめて、くれる…?」
多分、私は今、すごく淫らな顔をしている。