第3章 わからせてあげようかな
「…ありがとうな、桃浜。それと、スマン」
身支度を整え終えた伊豆くんが言った。
「伊豆くん…今日のこと、内緒に…」
「ああ、誰にも言わない」
もちろん、彼は誰にも決して言わないだろう。そういう人なことはわかっていた。
「じゃあ…私帰るね。伊豆くんもはやく着替えた方がいいよ」
そう言って私は立ち上がり、自分の通学鞄を取った。
「あ、いや。オレはユニフォームのまま帰るから。靴だけ履き替えるよ。桃浜ちょっと待っててくれ」
「え?一緒に帰るの?」
「え?違うのか?」
「一緒にいるところ、誰かに見られたら恥ずかしいんだけど…」
「え?だってオレたちもう付き…あっては、いないか。まだ」
だが、ここまでやったんだし…とブツブツ言って、伊豆くんは考え込んでしまった。私はその様子を見て、フウと息をついた。
「まあ、いいよ。一緒に帰ってあげる」
「本当か!本当に優しいな桃浜は…!」
やはり伊豆くんは騙されやすい人間かもしれない。いつか何かの詐欺にあったりしないだろうか。
「ねえ、だいたい私のどこを好きになったの?」
「そりゃあ、優しいし、頭もいいし、部活も熱心だし、それから…」
なんだか、私のことずい分誤解してない?別にいいけどね、これから少しずつわからせてあげようかな。私も君のこと、もっと知りたくなってきたところだし。