第4章 番外編
ローは渋々と娘の食べかけのフランスパンを口に運んでいた。
パン嫌いの父に、パンを食わせようとするのはリンくらいだろう。
そしてそのおかげか知らないが、彼のパン嫌いは徐々になくなりつつあった。
死の外科医として恐れられていた彼に対してのこの荒治療。
さすがユーリの娘である。
因みにリンは白飯はあまり好きじゃなく、パンが大好物だ。
本当、生まれる前に父になにか恨みでもあったのかと思うほどだ。
よってこの一家の朝ご飯は、パンとご飯の2種類が用意される。
ユーリとレンはどっちでもいいのだが、他の2人が煩いのでそうせざる得なかった。
そしてAM 10:00
漸くユーリが起きて来た。
既に3人は食事を済ませてソファーでくつろいでいたのだが、彼女は非常に眠そうな顔で特に気にせず食卓についてた。
「おはよー。ってあれ?フランスパン全部食べれたの?」
ユーリがご飯を食べ始めると、フランスパンが丸々一本なくなっているのに気づいた。
大きければ大きい程好きなようで、結構大きいフランスパンを買った気がするが、1人で食べれる量だったのか。
「おはよー!お父さんが半分食べた!」
リンはユーリの隣に座ると、先ほどのやりとりを母に話した。
「あぁ~、うん、ご愁傷様」
「……てめぇ」
ユーリが意味ありげな視線をローに送ると、案の定彼の眉間のシワが深くなった。
そもそもこのパンを巡る争いは今に始まったわけじゃない。
最初は娘が残してもローが食べることはしなかったのだが、ある日娘が「大人なのにまだ好き嫌いあるの?」って言ってきたもんだから、ローも意地になっているのだ。
まぁそのお陰で、彼の嫌いなものがだんだんなくなりつつあるのだが。