第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ローは震える声でユーリに再生を力を使えと何度も訴えていた。
この国で治療するにも、医療機関は全て破壊されているだろう。
かと言ってここからフレバンスへ戻るにも時間が掛かる。
いや、もう治療で治せる領域ではないかもしれない。
ユーリの命があと少しで消えるのを、医者であるローは気づいてしまった。
残された時間はもうなかった。
「……おまえが力を使わないなら、おれが使うぞ」
ローはユーリの胸に手を当てた。
数年前、ユーリに永遠の命を与えようとして、結局彼女に止められた。
その後は奇跡的に回復したが、そう何度も奇跡は起きないだろう。
この能力を使って彼女が喜ぶとは思っていなかったが、こんな結末を迎えるくらいなら、彼女に永遠の命を与えた方がマシだった。
「……分かった」
ローがROOMを発動したとき、再びユーリはローの手を握り止めた。
握られた手の力強さに、ローは驚いた。
彼女はまだ、生きようとしてくれているのか?
「……この場所は…怨念が強いから……またあの丘に連れて行ってほしい…」
ローはROOMを解除すると、彼女の真意を探った。
ここからあの丘までかなりの距離がある。
その間、彼女が死ぬ可能性はないのか?
「…お願い」
ユーリは必死にローに訴えていた。
彼女の命は消えようとしている。
もう、迷っている時間はなかった。
ローはユーリを抱え上げると、ROOMを発動しその場から消えた。