第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「……そこまでだ」
静まり返ったこの地で、はっきりとした声が響き渡った。
海兵たちが声のした方を振り返ると、藤虎が静かに立っていた。
彼の傍には、ギルベルト・シュライヤ・ラミアもいた。
「今回の事件の発端は、我々海軍にありやす。数年前の過ちを繰り返そうとする、政府を止められなかったこと、深く…深くお詫びを申し上げやす」
藤虎は深く、国王へ頭を下げた。
「我々も、彼女に危険が迫っていると分かっていて、止められなかった」
ギルベルトは悲痛な顔で藤虎の頭をあげさせた。
「今回のことは、4国を代表して私が責任を取る。だからどうか彼女を…フレバンスの国王を責めないで頂きたい」
ギルベルトの言葉に、シュライヤとラミアも悲痛な表情を浮かべていた。
誰かが責任を取るとかそういう問題ではないのだが、一国の王ともなるとそうはいかない。
被害の規模は測り切れない程で、国民に死者が出なかっただけでも奇跡だ。
4つの国を巻き込んで起きた今回の事件は、誰かがけじめをつけなければならない。
もちろんその責任をユーリに押し付ける気は微塵もない。
彼女はただの被害者なのだから。
「責任を取るなど、それはこちらの話でしょう。それよりもまずは……」
藤虎が向ける視線の先には、ユーリを抱きしめたまま動かないローの姿があった。
その姿を見て、それぞれの国王たちは悲しみで顔を歪ませた。
どこかで彼女が再生の力を使ってくれるだろうと思っていたのだが、その期待は裏切られようとしている。
力を使わないという事は、まだ彼女の中に亡霊が残っているのだろうか。
彼女は自ら死を選ぼうとしている。
それを止めることのできるのは、ローしかいないだろう。
それぞれの王は、二人の様子を静かに見守っていた。