第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
瓦礫に打ち付けられ倒れ込むローに追い打ちを掛けるように、ユーリが刀を構えて襲い掛かった。
ガキン!
ローの右目スレスレで刺さった刀。
ローは地面に落ちていた鬼哭を手に取ると、ユーリを薙ぎ払った。
ユーリはそんなローに笑みを深めると、体制を整えて上空へ舞い上がった。
そして何度か刀を振り下ろすと、鋭い刃となってローに襲い掛かった。
ローはROOMを使いそれを避けるが、彼女は攻撃の手を一切やめることはなかった。
「今がチャンスだ!!撃てー!!」
そして少し離れた所から聞こえてくる銃声。
ユーリがローに気を取られている間に、海軍が発砲してきたのだ。
しかしいくらユーリの身体に銃弾が撃ち込まれても、すぐに再生してしまう。
血が飛び散るのも一瞬の間だけである。
そんな彼女の姿は、本当に化け物だった。
(…やめろ)
海軍はユーリを撃ち続けた。
中には悪魔の実の能力者もいるのか、色んな攻撃が彼女を襲った。
ローはそんな奴らを切り刻んで止めさせたが、キリがなかった。
「もうやめてくれ!!」
ローはROOMを使い、上空で佇む彼女の元へ舞い上がった。
攻撃を受けている彼女は一切の表情を歪ませることなく、つまらなさそうに海軍を見ていた。
「それ以上こいつを……ユーリを傷つけるな!!」
無表情の彼女は痛みを感じていないかもしれない。
でもユーリの心はきっと、痛いはずだ。
「ユーリ!!!」
悲痛な声が辺りに響き渡る。
その声に、ゆっくりとユーリはローを振り返った。
彼女の身体には幾つもの傷が刻まれては、再生されて行く。
そんな彼女の姿を、これ以上見たくなかった。
ローはユーリに手を伸ばした。
ユーリへの攻撃が、ローにも流れてくるが、そんなのはどうでもよかった。
これ以上、彼女を……傷つけたくなかった。
ユーリは、目の前に迫ってきたローにそっと笑みを浮かべた。
彼女の刀の先は、ローの心臓へ向けられていた。