第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ユーリの刀はローへ向けられていたが、ローは迷うことなくそのまま彼女の元へ向かった。
このままユーリが元に戻らなければ、ここで死んでもいい。
ローの命は、随分昔から彼女に預けていた。
ローは笑った。
ユーリを安心させるため、諦めてほしくないために。
ローはまだ諦めたわけではない。
最後のその瞬間まで奇跡を、ユーリを信じていた。
ローが彼女を信じなくて、誰が信じるのか。
もしここで殺されるならば、それはそれでいい。
本来、ユーリを救う方法を考えなければならないのは、おれなのだから。
それが分からないまま、こうしてここまで来たのだ。
殺されても文句は言いまい。
寧ろ、助けれなかったことの方が問題だ。
彼女の悲しむ顔を、これ以上見たくなかった。
「……お前一人で抱え込むな」
思い返せば、ここ数年で色々なことがあった。
できることなら、これからも、彼女との思い出を残していきたい。
お互いの命が尽きるまで、傍にいたかった。
「……おれも、一緒にいるから」
ユーリが刀を振りかざすと、ローはそっと瞳を閉じた。
暗闇に浮かぶのは最後に見た……ユーリの笑顔。
そして、彼女の頬を流れる涙だった。