第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
政府との会談が行われる当日。
ユーリの熱はだいぶ下がり、体調も回復してきていた。
その事実にローは少し安心していたのだが、まだ油断は出来なかった。
未だに彼女はベットから起き上がることはできない。
食事はローが作って彼女に食べさせていたのだが、体調が回復してきた今でもほとんど口にしてなかった。
初めて作って持っていった時は、物珍しがって全部完食していたのだが、それが無理して食べていたことがすぐに分かった。
一応味見はしたので、味に問題があるわけではない。
次の日からはほとんど食が進まない彼女に、ローの心は穏やかではなかった。
でも、奇跡的に彼女の体調は回復に向かいつつあった。
それはローの腕のお陰なのか、違う何かが原因なのかは分からなかったが、ユーリが回復するなら何でもよかった。
「……もう少ししたらここを出る。おれが留守の間は、看護師達にお前の面倒は頼んでおいた」
ローはユーリの眠るベットの近くのイスに腰を掛けると、彼女の手を握り今後のことを話していった。
ギルベルト情報で、政府たちの要求は大方察しはついていた。
政府側も手荒に物事を進める気はないようなのでそこは良かったのだが、代わりにフレバンスの資源を要求されるのは納得がいかなかった。
その資源には珀鉛も入っているかもしれないと噂されている。
もしそれが本当なら、このまま黙っていても国民の命が脅かされるのは変わりない。
十数年前の悲劇を繰り返そうとしている政府に、ローは頭を悩ませていた。
その辺の取引を、ローが上手く持って行かないといけないのだが、もし上手く行かなければこれから先は政府と争いを続けていくことになる。
その事実が、重くローにのしかかっていた。
ローはため息を吐くと、ここを出る前にユーリの最後の診察をした。
今は色々思い悩んでも仕方がない。
ユーリのとこも、フレバンスのことも、政府のことも、これから先のことも、問題は山積みなのだがやるしかなかった。