第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
白い街、フレバンス。
誰もが見とれるほどの美しさを持つこの町は、とても栄えていた。
それが例え、人の命を犠牲にして成り立っていたものであっても。
ユーリは街を歩いていた。
どこまでも白く続くその道に、不思議な感じがしていた。
周りの建物はとても綺麗で、すれ違う人々も、とても幸せそうだった。
そしてどれくらい歩いただろうか、周りの景色が徐々に変わりつつあった。
驚いている人、泣いている人、怒っている人。
町中が騒がしくなりつつあり、遂には悲鳴までもが聞こえ始めていた。
ユーリはざわつき始めた心を落ち着かせつつ、更に歩みを進めた。
そしてそう時間が経たない内に、白い街は火の海に包まれた。
逃げ惑う人々、死体の山、武器を持った兵士達。
ユーリは思わずその場に立ち止まり、その風景を見ていた。
人が1人死ぬたびに、彼女の中に黒いものが流れてくる感じがした。
それは決して気分が良いものでなく、彼女は吐き気に襲われながら、その場に立ち尽くしていた。
そしてどれくらい経っただろうか。
燃え盛っていた炎は何時の間にか消え、辺りは静寂に包まれた。
(……行かなきゃ)
ユーリは再び歩みを進めた。
瓦礫の山となった灰色の街並みを、ただひたすら歩いていた。
この場に1人でいるのが怖くて仕方ない。
だから早く彼に会いたかった。
(…っ!…ロー!)
ユーリは前方にローを見つけると、彼の元へ駆け出した。
だけど、どんなに走っても、どんなに手を伸ばしても、彼に届くことはなかった。
ーーーー時は満ちた。もう思い残すことはあるまい。
あと少しでローに手が届こうとした瞬間、そんな言葉が聞こえたような気がした。
ユーリの意識は、闇に飲まれていった。