第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「なんで言わなかったんだ!?」
ローが久しぶりに家に帰ると、ベットで横になっているユーリを見て驚いて駆け寄った。
時間帯はまだ昼間であり、普段活発な彼女が寝ているのを不自然に思ったのだ。
そしてベットの上でぼーっとしている彼女に近づくと、すぐに彼女の異変に気付いた。
ローは仮にも医者なので、話を聞くまでもなくユーリが高熱に浮かされているのが分かった。
そして出てきたのが先ほど言葉である。
再生の力はどうしたんだと聞けば、何故か治らないと彼女は言った。
ローはユーリに言いたいことが色々あったが、まずは彼女の治療が先だと思い、手早く彼女を診察していった。
ネックレスが反応しなかったということは、本人の体調が悪いくらいでは危険と見なされないのだろうか。
ローは役に立たないネックレスに舌打ちしていた。
「いやはや、申し訳ないです」
ユーリは大人しく診察されながら、忙しいローの手を煩わせていることに謝罪してきた。
その言葉にローは無言で睨みつけてユーリに言いたいことを訴えると、黙々と診察していった。
時折彼女に質問しながら症状を見ていたのだが、ただの風邪にしては高熱過ぎる。
ローは軽く動揺しながら彼女を診ていた。
普段の彼からは想像もつかない姿だが、ユーリが絡んでいるので仕方ない。
数年前のトラウマは、ユーリに対する病的な程の依存症を発症させていた。
その事実に、もちろん当人たちは気づいていない。
更に言うならば普段は明るくて元気な彼女が体調を崩すなど、あまり想像ができなかった。
だからその事が余計に、彼を動揺させていたのだ。
「…暫く家に帰れなくて悪かった。お前が体調を回復するまで、傍にいてやるから…」
ローはユーリの診察が終わると、薬を飲ませて彼女の傍にいることを決めていた。
ユーリの予想通り、彼は大事な仕事を控えているにも関わらずユーリを選ぼうとしている。
そっとユーリの頭を撫でている彼の表情は、不安な気持ちで満ちており、彼のその言葉はユーリの心を締め付けていた。