第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
だが、そんなローの頑張りも虚しく、ユーリの元へ帰れない日々が暫く続いた。
ユーリはローが忙しいのは分かっていたので、大人しく家で待っていた。
今の彼女に出来ることは、ローを信じて待つことだけである。
本当は手伝いをしたかったのだが、ローはそれを許さなかったので諦めるしかなかった。
でも、そんな日々が半月程続いた頃、彼女の身体に変化が起き始めた。
変化と言っても体調が優れてない程度であり、もともと風邪を引かないタイプのユーリは気にすることなく過ごしていた。
しかし日に日に体調が悪化していき、遂には高熱が出てしまった。
流石に気にしないわけにはいかなかったので、ユーリは修理屋としての仕事を休んで安静にしていた。
そして家で体調を整えるために頑張っていたが、一向に回復する気配がなかった。
今のユーリの姿を見れば、ローが心配するのが分かっていたので、彼に会う前に何としても治したかったのだ。
これ以上彼の負担や心配ごとを増やしたくなかった。
噂では政府がすぐそこまで来ており、近々ローと会談をするようで、今の彼がどれだけ忙しいか分かっていたのだ。
(……はぁ、寝れない)
ユーリはベットに横になり、ぼーっと天井を眺めていた。
ここ最近寝すぎて、逆に寝れなくなりつつあった。
食欲もほぼなく、彼女は一日ベットの上で過ごしていた。
ローに会いたい気持ちもあるが、今は会いたくなかった。
彼のことなので、大事な会議を放置してユーリの傍にいそうな気がしてならない。
その行動はとても嬉しく思うが、そんな選択をさせてしまうことに、申し訳ない気持ちの方が強かった。
ユーリは瞳を閉じると、無理やり眠りに入ることにした。
どういうわけだか再生の力を使っても回復する気配はない。
だから体調を良くするためには、今は寝るしかなかった。
しかしそんなユーリの願いも虚しく、高熱が出始めて数日後、ローが久しぶりに家に帰ってきてしまった。