第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ローとラミアの争いも終息を迎えようとした頃、ギルベルトがユーリとローを呼んだ。
ラミアとシュライヤは今日は先に帰るようで、その場を後にすることになった。
ラミアが帰り際にユーリにお菓子をあげていたが、ローが阻止した。
「心配ならローが食べてみれば?」
そう不敵な笑みを浮かべるラミアに、ローは早く行けと部屋から追い出した。
ラミアの持っているもので、碌なものがないのはローが一番知っている。
隙あらばユーリにちょっかい出そうとする彼女に、ローのため息は止まらなかった。
「さて、ユーリ、最近何か変わったことはないかな?」
3人は再びイスに腰をかけると、ギルベルトが早速口を開いた。
「ん?うーん…特に変わったことはないですが」
ギルベルトの言葉にユーリは記憶を辿ったが、特に思い当たる節はなかった。
そんなユーリにギルベルトは以前ローに話した内容と同じ話をした。
そして話し終わって再度ユーリに確認をしたが、彼女の答えは変わらなかった。
「私の見間違えでなければ、君の真っ白な心に黒い塊が見えるんだ」
ギルベルトは目を細めると、何かを探るようにユーリを見た。
「それが霊だと言うのか?」
ローは眉をひそめると、同じようにユーリを見た。
「霊…と言っていいか分からないが、私が今まで見てきたものより、随分と禍々しい力を感じる」
ギルベルトは今で多くの霊と言われる存在を見てきた。
だからユーリの中に見えるものが、今までとは比べ物にならないくらいの怨念の塊ということにすぐ気づいた。
まるでフレバンスの全ての亡霊達が、1つにまとまったような感じだ。
「私もここまで禍々しいものは見たことがない。そこまで酷くなければ知り合いに頼んでどうにか出来たかもしれないが…今のままだと厳しいな」
ギルベルトは顎に手をやると更にユーリを見ていた。