第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「霊……ですか?」
今まで黙って話を聞いていたユーリだが、ここに来てようやく口を開いた。
ユーリもローと同じであまり霊の類は信じていない。
妖精というものが存在しているので、多少なりともそんな不思議なこともあるとは思っているのだが、あまり興味はなかった。
そしてユーリ自身にそんなものが憑りつかれていると言われても、自覚症状もないのでどう反応したらいいか分からなかった。
「ははっ、本当に君たちは似ていないようで似ているな」
ユーリの言わんとすることがわかったギルベルトは、口元に笑みを浮かべて2人を見た。
「取り合えず、私もできる限り調べておくから、君たちも何か変化があれば遠慮なく言ってきてくれ」
そして暫く3人で考え込んでいたのだが、これ以上考えても仕方ないので今日はここまでにした。
霊を祓ってくれる人を見つけるか、ユーリの自覚症状が出てこない限り対策のしようがないのだ。
「じゃぁ私もこれで帰るよ。ユーリも心配だが、ローも政府相手に今後大変だと思うから、何かあれば私に言ってきてくれ」
ギルベルトはそれだけ言うと、王宮を去っていった。
そして残された二人は少しその場で話し込んでいた。
因みに従者たちは、だいぶ前にローが部屋から出るように指示をしていた。
「ローは霊を信じてないんだよね?」
「…あぁ、そうだな。おまえもだろ?」
「うん。何となくいるかもしれないなぁーとは思ってるけど、憑りつかれてると言われてもあまりピンとこないな」
ユーリは自分の身体の変化が何もないので、あまり信じてなかった。
もしかしたら将来急変するかもしれないが、来るか分からない未来を想像しても仕方がなかった。
「取り合えず、何かおかしかったらローに伝えるよ。それよりも、問題は政府のことだね」
「…それはおれがどうにかするから、おまえは大人しくしてろ」
ローはまたユーリが首を突っ込んできそうだったので、先に釘を刺した。
頼むから自ら危険な場所に来ないでくれと言いたい。
別にユーリが邪魔だからとかではなく、本当に彼女が心配なのだ。
1年ほど前の出来事は、最早ローにとってトラウマレベルのものである。