第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「……フレバンスの周りにいる国王や王女は、全員好き勝手に海を出歩いているのか?」
ラミアが用意された席に着くと、ローは取り合えず話を聞いた。
ローの考えが正しいならラミアは表向きは商人だが、実際の顔は王女ということになる。
カジノの男といい、どんだけ立場を隠して好き勝手やってるんだ。
そのせいかは分からないが、ローの周りには知り合いばかりになってしまったではないか。
それが良いことなのか悪いことなのかは分からないが、慣れ合う気はなかった。
「この辺の王は皆アクティブなのよ。最初に出歩き始めたのはギルベルトだけどね。…あっでも、もう一人の国王は引きこもりがちよ?」
ラミアはそいつのことを思い出しているのか、少し楽しそうだった。
もう一人の国王とはシュライヤの国の奴だろうか。
まさか体調が悪いと言ってきたのも仮病じゃないだろうなと、ローは頭が痛くなってきた。
「あなたも暇ならまた海にでも出たら?結構この辺の国はそこのところ自由よ。あなた、国王ってガラじゃないでしょう?」
ラミアはニヤニヤしながらローを見ていた。
ローがこの立場を嫌がっているのを、言われずとも察したのだろう。
「……そうかよ」
ローはなんだかどっと疲れが押し寄せてきた。
自由に越したことはないが、いまいち理解が追い付かない。
フレバンスが碌な国に囲まれていないのは分かったが。
「因みにアマネとシズも今私の国に滞在しているから、挨拶に向かわせようか?」
「……余計なことしなくていい」
ローはラミアを睨んだ。
頼むからこれ以上悩みの種を増やさないでほしかった。
「そう、それは残念だわ」
ラミアはそんなローの視線など気にすることなく、次の話題に切り替えていった。
話の内容はシュライヤとした時と大して変わりはしなかった。
ローは適当に話を聞き流しながら、この身内ばかりが揃ったカオスな状況をどうするべきか頭を悩ませていた。