第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
藤虎と出会って更に数日が経った。
院内は相変わらず多くの人で賑わっており、その対応にローはおわれていた。
ユーリも店が落ち着けばローの手伝いをしていたのだが、医療関係に詳しくない彼女に出来ることと言えば、書類の整理や受付くらいである。
それでもいいとローは言っているので、恐らくユーリを近くにおいて癒しを補充しているのが大きいのだろう。
ユーリの笑顔を見ていると疲れも取れると、以前ローが言っていたような気がする。
もちろんユーリの評判はスタッフや患者からも良く、頻繁に話しかけられてはお菓子等を貰っている姿を見かけた。
これが男からなら闇に葬っているところだが、女性や高齢者からであるなら取り合えず黙認していた。
「……はぁ、忙しすぎる」
二人は昼休みに入ると院長室で休んでいた。
休むと言っても、もちろん行為に及んだのだが。
ローはベットに横になったままユーリを抱きしめるとため息を吐いた。
分かってはいたが、医院長と国王の掛け持ちは激務すぎる。
寧ろ今までよくやっていけたと不思議に思うくらいだ。
ユーリと落ち着いて過ごせる時間など、今となっては昼休みしかない。
ローはユーリの首元に顔を埋めると、時間の許す限り癒しを取っていた。
「……大丈夫?休む?家でゆっくりしようか?」
ユーリは行為が終って少しぼーっとした表情だったが、しっかりとローを抱きしめ返した。
ローが大変なのは知っていたし、そうなる原因を作ったのはユーリなので、少しでも彼の負担が減るならなんでもしてあげたかった。
もちろんローは、どうせ狙われるからユーリの話に乗ったことに負い目を感じることはないと言ってくれたが、気になるものは気になってしまう。
「……ユーリが足りない」
ユーリはローが肉体的に限界に来ているかと思っていたが、どうやら違うようだ。
なるほど、精神的なものか。
ユーリはこれからはローが帰ってくるまで起きておくべきか迷っていた。