第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ユーリは藤虎の刀を直してあげると、取り合えず今日はお店を閉めて彼と話すことになった。
もともと夕方に差し掛かり客も彼だけだったので閉めるのは良かったのだが、ユーリの精神衛生上よくなかった。
「お忙しいところ訪ねてしまいすいやせん、あれ以来そちらは何か変わりやしたか?」
藤虎は出された茶をすすりつつ、何とも際どい質問をしてきた。
その質問が意味するのは何か。
ローがこの国の王なのは当然知っているだろう。
ユーリは藤虎からの威圧感にビビりつつ返答に迷っていた。
「はっはっは、そんなに硬くせずとも、あっしはこの国に介入しやせんよ」
ユーリが黙っているのをどう捉えたのか、藤虎はそう付け加えた。
藤虎は介入しないという事は、他の人は何か企んでいるという事なのだろうか。
「それはどういう意味でしょうか」
ユーリは彼に問いただした。
本当はローを呼ぶべきなのだろうが、彼は今王宮に呼ばれているので無理だった。
「いやはや、あっしがこの国を訪れたのもあんたさんにお伝えしたいことがありやして…」
藤虎は笑みを消すと、神妙な顔つきで話し始めた。
話の内容はユーリとローが予想していた通りだった。
以前ローとこの国に今後訪れる厄介ごとについて話したことがあった。
七武海でもない海賊の彼が国王として君臨するのを、世界政府はよく思わないだろう。
遅かれ早かれ政府との衝突は避けられない。
そうなればさっさと国王の立場を降りればいいとも思うが、ローの人望は既に厚く、それも難しい問題だった。
政府と衝突する前に次の国王が見つかればいいのだが、再建したばかりのフレバンスだとそれも難しいだろう。
それなら最初からこの話を受けなければよかったのではと思うかもしれないが、賞金首の彼はどっちにしても狙われる。
だったら別に国王だろうが、ただの病院の医院長だろうがそう変わりはない。
寧ろ国王の方が、認められれば狙われる可能性も少なくなるのではと最近思い始めていた。