第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ゴボッ
ユーリは未だに信じれない様子で妖精を見ていた。
本当は話したかったが、声がでない以上目で訴えるしかない。
「今すぐに信じなくていいわ、とりあえず生きる気があるならこれを食べなさい」
妖精が手をユーリの前にかざすと、カプセルの中に変な果物が現れた。
ゴボッ
ユーリはとりあえず手に取ったが、見た目が禍々しく非常に不味そうな果物を食べる気になれなかった。
暫くその変な果物を眺めていると、早くしろとばかりに妖精がカプセルをバンバン叩いて来たので、渋々ちょびっとだけ齧った。
ゴボッ
恐る恐る噛んでみるが味は全くしなかったので、そのままチビチビと果物を齧っていった。
同時に液体も一緒に口の中に入ってきたが、これもまた味はしなかったので気にならなかった。
「ちなみにその果物を食べると99%の確率で死ぬから」
ガバッ!!ゴボッゴボッ!!
ユーリは聞こえて来た恐ろしい言葉に思わず吐いた。
(いやいやいや!なんで今言った!?わざとか?わざとなのか!?半分くらい食べてしまったじゃん!99%ってどんだけ殺す気満々だよ!地球最強の毒生物でも後数パーセントくらい譲歩するんじゃない!?)
ユーリはゴボゴボと水を吐きながら目の前のガラスを恨みを込めて叩いてやった。
(あぁ、さようなら私の人生、夢かもしれないけど。即効性の毒かな、それとも遅延性の毒かな、夢かもしれないけど)
ユーリはもうどうにでもなれと思い、再び目を閉じて寝ようとした。
「だーかーら!寝るな!あなたは特別にこの世界に呼ばれたから死なないのは分かってて渡したんだから!この世界の人が知らずに食べたら1000人に1人の割合でしか生き残らないけど。それよりこれを見なさい!」
妖精はカプセルを数回叩くと、貼り紙のようなものをガラスに貼り付けてきた。
99%情報いらなかったよなと文句を言いたかったが、声が出るわけでもない。
ユーリは仕方なく目の前に貼られた説明書のようなものを見た。