第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ゴボッ、ゴボッ
聞きなれない音と、感じたことのない浮遊感にユーリはゆっくりと目を覚ました。
「………」
ぼやけていた視界が次第にはっきりとしてきたが、周りが薄暗いのでほぼ何も見えなかった。
微かに漏れている光は機械か何かだろうか。
ユーリはぼんやりとその光を見つめていた。
(………………はっ?)
ゴボボボボボボッ
ユーリは光を見つめること数秒。
漸く異常事態に気づき声を上げようとするが、水の中にいるせいか声がでなかった。
(な、なんだこれは!?水の中?でも息苦しくない、てかなんでこんなカプセルの中に閉じ込められてるの!?)
ユーリは目の前のガラスに手をつき、なんとか脱出できないか考えた。
しかし割ろうにも浮いてて力が出ない。
それならばと、どこか出れそうな場所を探すが、カプセルの中はそんな広いものじゃなかった。
(……なんだこれ)
ユーリは混乱で頭が回らないのか、最早その言葉しか出てこなかった。
何が悲しくて、こんな緑色の液体にホルマリン漬けにされないといけないのか。
(そもそも水中で息が出来るなんてあり得な………あぁ、なるほど、これは夢か!)
普段夢の中で夢だと気づくユーリではないが、最早それ以外に考えられなかた。
そして夢だと思うと少し落ち着き冷静になれたので、早く目覚める為にもう一度寝ようとした。
「ちょっとーなんで急に寝ようとしてるのよ!」
しかしすぐに睡眠妨害された。
ユーリはなんなんだと目を開くと、そこには小さな人型の妖精がいた。
ユーリは漸く出てきた夢の登場人物に少し興味を持ったが、とりあえず目を覚ましたかったので再び目を閉じようとした。
「……夢とでも思ってそうね」
妖精は溜息をつくとこのままでは全然話が進まないので、強引に説明し始めた。
この世界が異世界であるということ。
元の世界に戻れる方法はないこと。
ユーリがこの世界に呼ばれた理由はある役目を果たす為であり、このままここにいてもいいが
孤独死するかその内殺されるということを。