第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「というかごめん、実はもう求人募集だしてしまったんだが」
「……はぁ?」
ユーリの言葉にローは唖然とした。
ローが許可を出した覚えはないのに、この行動の速さは一体どこからくるのか。
てか最初に聞いてきた疑問形は最早決定事項じゃねぇか。
ローはため息を吐くと、何かもう色々諦めざる得なかった。
そして出された求人募集のせいで、あっという間に院内も賑やかになった。
ローは乗り気ではなかったが、取り合えず誰を雇うのかは選んだ。
選ぶ基準が医療に詳しいというよりも、ユーリとローに興味がなさそうなところを選ぶのが何とも彼らしい。
「---以上だ。分からねぇことがあるならその都度聞いてこい」
目の前の看護師に色々指示を出しているローは、はるか昔の父の姿を思い出していた。
フレバンスが滅び捨てた筈の夢を、ユーリが拾ってくれた。
まさかこんな日が来るとは、夢にも思っていなかったのだ。
「……はぁ」
しかしローはユーリが別行動だということが気に入らなかった。
どんだけだよと思うかもしれないが、先ほどもユーリに下心あって近づいてきた男を撃退したばかりだ。
スタッフは選べるかもしれないが、客までは選べない。
手に指輪をしてようが、構うことなくアプローチをかけてくる野郎どもに、ローはどうしたものかと頭を悩ませた。
もちろんそれはローにも言えるのだが、彼はまるで相手にしないので問題はない。
それはユーリもそうなのだが、ローの心配がなくなることはなかった。
出来ることなら、目立たずにひっそりとやって欲しかった。
しかしそんなローの願いも虚しく、フレバンスで一番大きなこの病院は瞬く間に有名になった。
この病院に行けば、人だろうと物だろうと治らないものはないと、忽ち噂が広がったのだった。