第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ローは男から解放されて医院へ戻るとユーリが笑顔で出迎えてくれた。
「おかえりー!首脳会談はどうだった?」
ローに抱きついてきた彼女は、微妙に意味の分からないことを言ってきた。
しかしローもいい加減慣れてきたので、特に気にすることはなかった。
「ただいま。面倒なうえにかなり疲れた」
結局あの男に付き合っていたら遅い時間になってしまった。
ユーリがだんだん心配になってきたローは、無理やり話をぶった切って帰ってきたのだ。
「お疲れ様です。次からは私も手伝うよ!記録係とか!」
「おまえそんなことできるのかよ」
「失礼だな!日記みたいなものでしょ?楽勝だよ!」
「……だいたいどうなるか想像ついたからおまえは絶対来るな」
ローは医院とは別にある部屋にユーリと一緒に向かうと、そこにはすでに食事の用意がされていた。
フレバンスに来てから暫くするとユーリが作ってくれるようになったのだ。
ローは何か文句を言っているユーリをスルーすると、着替えるために一度自室に戻った。
そして程なくして戻ってきたローにユーリは再び笑顔を向けると、少し遅い夕食をとることにした。
「この病院めっちゃ広いよね。訪れてくる人も増えて来たし求人募集でもする?」
「……別にまだいいだろ」
ローは焼き魚を食しつつ適当に答えた。
確かにそろそろ人手も足りなくなってきたような気もするが、正直面倒だった。
というかユーリがこの質問をしてくる意図が分かっていたので、暗に拒否を示したつもりだった。
「えー!私もそろそろお店開きたいし、求人募集しようよ!」
ユーリの言葉にローは眉をひそめた。
やっぱりそれが狙いじゃねぇか。
ローはこのままユーリの修理屋の話をうやむやにする気だったが、残念なことに彼女はしっかりと覚えていた。
「もうこのままおれの手伝いでいいだろ。何が不満なんだよ」
「いやいや流石にこの規模の病院を私一人では無理だよ!今はまだいいけどその内二人仲良く過労死するよ!」
ユーリの言う通り、この規模を2人でやりくりするのは不可能だろう。
不可能と分かっていたが、ローは中々引かなかった。
やはりユーリが心配なのだ。