第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「いやー相変わらずラブラブだねぇ。私も妻が欲しくなるよ」
そしてまたもや勝手にローの心を読んだのか、男が一人で勝手に納得していた。
そんなギルベルトの様子にローはため息を吐いた。
勝手に心を読んで話を進めれるなら、これ以上話すのを止めてやろうかと思っていた。
「しかし再建したばかりのフレバンスでは心もとないだろう。こういう時は隣国の力に頼るべきだよ」
「あぁそうかよ。じゃぁよろしく頼むわ」
どういう風の吹き回しか知らないが、海軍としての顔を持つ彼が手を貸してくれるというなら、勝手にすればいい。
まぁこの男を信用しているわけでもないので頼る気はなかったが。
「これで用件は終わっただろ。さっさと帰れ」
ローは男にこれ以上話はないとばかりに帰りを促した。
ようは早くこの場から立ち去って欲しくて、彼の申し出を受け入れたまでなのだ。
「何を言っている、真の本題はここからだ」
中々席を立たない男に痺れを切らしてローが先に席を立った時、男が意味の分からないことを言ってきた。
本題に真も偽もあるわけねぇだろ。
ローは本格的に疲れて来たのでもう無視してこの場から離れようとしたが、男がドサッと大量の本をテーブルに並べてきた。
「生物学者で有名なルッシュと言う人物を知っているかい?実は最近新しい本を出してね……」
ローが帰りたいオーラを全開にしているのに、男は構うことなく気になる本の議論を始めた。
ローは暫く唖然としてたが、男が付き合えとばかりに話題を振ってくるので帰るタイミングを失ってしまった。
ローが博識で読書家なのを知っているのだろう。
議論する相手に会って間もないローを選ぶあたり、もしかしたらギルベルトの周りには本を読むような奴がいないのかもしれない。
一国の王という立場でありながら、政治の話題よりも大事な話が己の趣味の読書とは。
ローも人のことは言えないが、本当にこいつが国王なのかと疑っていた。
(まぁ、変に真面目な奴よりまだマシか)
何やら楽しそうに話しているギルベルトにローはため息を吐くと再び席についた。
そして何だかんだでローも微妙に興味のある話題だったので、暫く彼の話に付き合ってしまったのだった。