第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「さて、雑談はここまでにして本題に入ろうか」
ローが鬼哭に手を掛けようとした時、漸く男が用件を言う気になった。
雑談も国王としての嗜みだと言う目の前の男を睨みつけると、さっさと言えと先を促した。
「やれやれ、折角君たちがこの先大変そうだから手を貸してやろうとしてるのに、随分つれなじゃないか」
「…どういうことだ?」
ギルベルトは大げさにため息を吐くと、笑みを消して話を続けた。
「七武海ならまだしも、今となってはただの海賊である君が国王を務めていることは色々問題が起きるという事だ」
「……そんなことは分かっている」
遅かれ早かれ世界政府に目を付けられ、狙われるだろう。
ギルベルトの言葉にローは今更何を言ってるんだと思った。
そんなことは百も承知で今回の件は受け入れたのだ。
七武海を一度抜けた以上再度加入するのはほぼ不可能である。
だから海賊のまま王になるしかなかった。
「それが彼女に危険が迫ると分かっていても?」
「あいつを危険な目に合わせるわけねぇだろ。ユーリに手を出すものは全て抹殺する。……もちろんてめぇもな」
ローは口の端に笑みを浮かべて男を見ていた。
ユーリにも危険が及ぶことは分かっていたが、彼女が引かないので受け入れるしかなかった。
ユーリがフレバンスのトップに立つくらいなら、ロー自らその責務を背負い、邪魔してくる敵を全て排除したほうが早いと考えたのだ。