第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
その日ユーリ達は院内で薬品等の整理をしていた。
フレバンスが再生してまだ二週間しか経ってないのに、すでに怪我人が院内に運ばれつつあったので、色々準備をする必要があったのだ。
外では色々揉め事が起きてるようだったので何となく察していたが、死の外科医として有名なはずの彼に何の疑いもなく治療にくるのはどうなのかと思っていた。
よほどこの国に訪れる人は能天気なのか、又は世間知らずなのか。
いつのまにかフレバンスの住人として溶け込んでいる事実に、ローは少し戸惑っていた。
「あれ、あの人達って…」
そして面倒ごとと言うのが。
「…急に訪れてすいません。もう我々ではどうにもできないので助けてもらえないでしょうか」
夕方になり粗方薬品の整理も終わった頃、いつかの支援活動をしていた人々が訪ねてきた。
ユーリとローは顔見合わせて少し考え込むと、嫌な予感がしたが彼らの話を聞くことにした。
「実は今までなんとか我々が治安を守ろうとしていたのですが…」
彼らはローの鋭い視線に怯えながらも話し始めた。
何でもフレバンスが復活して以来、何とか彼らがこの国をまとめようとしてくれていたらしい。
他国からも応援に来てくれて一時はなんとかなりそうだったが、人がどんどん増え続けると彼らだけではもうどうすることもできなかった。
犯罪が横行するこの国で、彼らのような一般人だけでは限界があったのだ。
「断る」
「えっ、早!」
彼らの話を最後まで聞くことなくローは速攻で断った。
それに驚いているユーリだが、ここまで聞けば何をさせたいのか察することができるだろう。
「む、無理は承知でお願いしてるんです。どうか国王となってこの国をまとめてください!あなたほどの力がないと、もうどうにもできないんです!」
彼らの話をまとめるなら、この国には絶対的な権力者が足りないらしい。
だからローの実力を見込んでお願いしにきたのだ。
死の外科医として有名な彼が睨みを利かせてくれれば、余計なことをしようとする輩も減るはずだと。