第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ユーリがゆっくり目を覚ますと、驚いた表情をしてるローと目が合った。
「……っ!ユーリ!」
ユーリに覆い被さるように抱きついてきたローは、何時もの余裕は感じられなかった。
悲痛な声、表情、そして腕に込められた力で、どれだけ心配をさせてしまったか伝わってきた。
「…すいません、また心配をかけてしまいましたね」
ユーリはそっとローを抱きかえし、安心させるように背中を撫でた。
どうやらユーリは3日程意識を失っていたらしい。
その間ローはずっと原因を探していた。
再生の力があるにも関わらず目を覚まさないのは、何か他の要因があるはずだ。
もしかしたら能力の半分を失う可能性もあると言っていたのでそれが原因かもしれないが、何もせずに待ち続けることなど出来なかった。
「大丈夫なのか?」
ローはゆっくりユーリを起き上がらせるとその顔を覗き込んだ。
顔色はあまり良くないが、意識ははっきりしているようだった。
「大丈夫です。ちょっと気分が悪いですが」
ユーリは笑った。
その言葉と表情にローは安堵の溜息を吐いたが、彼の中にある不安と怒りはまだ治らなかった。
「頼むから、無理はしないでくれ。おれを殺す気か」
ユーリの手を取り悲痛な表情で訴えてくる彼に、ユーリの心も締め付けられた。
「すいません、もう無理はしないです。フレバンスを元に戻すまでだと思っていましたので」
ユーリは再生の能力を発動させた。
みるみる体調が回復していく感覚に、力は完全には失っていないようだった。
それからいくつか能力を発動させたのだが、失った力は他人を再生できる能力のみだった。
自分自身と物を再生できる力はまだ残っていたが、フレバンスほどの再生をもう一度行えば今度こそどうなるか分からなかった。
ユーリはそのことをローに説明すると、今日はもう少し眠ることにした。