第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ユーリの意識は深い闇の中に落ちていった。
どこまでも落ちて行く感覚に、ただ恐怖しかなかった。
クスクス
ユーリがぼんやりしていると、誰かの笑い声が聞こえてきた。
ーーー人間だ。しかも使いやすい。
頭の中に響いて来る声にユーリは辺りを見渡すが真っ暗で何も見えなかった。
ーーー長年の恨みを晴らす時がきた。我々にしたことを後悔させてやる。
(……誰?)
ユーリは意味が分からず何のことか聞こうとしたが言葉は出てこなかった。
ーーーフレバンスにもう一度繁栄を、そして世界政府、近隣諸国の滅亡を
ユーリの中に暖かい何かが流れ込んで来る感じがした。
暖かいが、とても気持ち悪く感じた。
ユーリは抵抗したが体内へ侵入してくるのを止められなかった。
ーーー時が来るまで、おまえの身体は使わないでいてやる。今のうちにやり残すことがないよう生きるがいい
その言葉を最後にユーリの意識は浮上していった。
体内が焼けつくように熱い。
ユーリは朦朧とする意識の中で混乱する頭を整理していった。
あれ……私は…
しかし記憶がどんどん薄れて行く。
先ほどまで言われていた言葉は何だったのだろうか。
もう、思い出せなかった。