第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「…おい、もう…」
ローはユーリの様子に気づき彼女を止めようとした。
まだ終わってないかもしれないが、ここで彼女の命を危険に晒すことなど望んでいない。
ローは彼女の正面に周り、その手を掴んだ。
「…っ!!もういい止めろ!!」
ローはユーリの顔を見ると驚いたように声を張り上げた。
ユーリの口からは、血が流れていた。
「……あぁ、うん。今終わった」
ユーリは虚ろな瞳で正面を見据えると、ふわりと笑った。
その瞳にはローを映してなかった。
そして能力を解除させると、ゆっくりローに倒れ込んできた。
「すまん……ちょっと寝る」
ユーリはそう言うと静かに瞳を閉じた。
「……おいっ」
ローはユーリを抱きかかえるとその身体を揺すった。
しかし彼女の瞳が開かれることはなかった。
静かに眠る彼女の姿に、数か月前の光景が蘇った。
その光景は、ローを動揺させるには十分だった。
「…くそっ!」
ローはROOMを使いフレバンスへ急いだ。取り合えずユーリを診察する為に、あの病院へ向かったのだ。
どこまで再生出来ているか分からないが、ここから一番近い街でも半日は掛かってしまう。
それならフレバンスで治療をしたほうがまだマシだ。
腕の中のユーリは眠っているようにも見えるが、昏睡状態なのだろう。
ローは舌打ちをすると病院へ急いだ。