第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ユーリはローに案内され、小さな丘にきた。
小さな丘と言っても十分にフレバンスを見渡すことができる。
この場所は、ローが幼いころ妹と一緒に遊んでいた場所だと教えてくれた。
今は木々も枯れて花も咲いていないが、きっと当時は美しい場所だったのだろう。
「……さて、やりますか」
ユーリはフレバンスを眺めると、大きく深呼吸して瞳を閉じた。
その姿を背後からローは見守っていた。
(白い街フレバンス、全ての始まりの場所)
ユーリは手を前方に突き出すと、能力を発動させた。
すると、薄い膜のようなものがフレバンス全体を覆った。
ちょうどROOMのような感じだろうか。
ユーリは手を動かし、瓦礫と化した建物をまず元の姿に戻していった。
薄い膜の中で瓦礫が無重力のように浮き、形を取り戻していく。
その様子を見てローは、改めて彼女の力の凄さを実感していた。
ゆっくりと白く美しい街並みを取り戻していく。
ユーリの額から寒いなずなのに汗が流れ落ちた。
表情もだんだん険しくなっていき、大きな負担がかかっているのが分かる。
しかし背後のローに心配させないよう、ユーリは微動だにしなかった。
ローを背後に待機させたのもその為だ。