第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
二人は部屋に戻るとユーリはベットでゴロゴロし、ローは図書館から幾つか持ってきた本をソファーに座って読んでいた。
「へぇ、ローが貰った本はすごい便利そうだね」
ユーリはローから借りた本を興味深そうに見ていた。
妖精にあって本を押し付けられたと話は聞いていたが、実物を見るのは初めてだった。
だが、どこを見ても白紙だったのですぐに興味の対処からはずれていった。
ローもさっきまで絵本を見ていたが、数ページ捲って興味の対象からはずれたのかすぐにユーリに返してきた。
そしてユーリもローに本を返そうと思ったのだが、何を思ったのか勝手にその本に落書きを始めた。
もちろんローは気づいていない。
ローの話を聞く限り別にこの本はそこまで重要でもなさそうだったので、少しくらい落書きしてもいいだろうと思ったのだ。
まぁ一応鉛筆で書いたのだが。
そしてユーリは満足したのか、本を閉じるとそのまま横になりウトウトし始めた。
「明日の夜までにはフレバンスに着くかなぁ」
「…普通に行けば着くだろ」
町の人から話を聞く限りでは1日あれば十分越えれる高さの山らしい。
どんなにユーリが鈍臭くても、ローがいるから取り合えず大丈夫だろう。
「着いたらまずはボランティアの人に会って話をして、どこか町を見渡せる場所に行きたいな」
「町を見渡す必要があるのか?」
「うん、町全体を見てイメージをしないと多分上手くいかない。どこかいい場所ないかな?」
「……一応心当たりはあるが」
「よし、じゃぁさっと行ってさっと再生してさっと終わらせよう」
ユーリの言葉にローは無理はするなと言ったが、彼女から返事が返ってくることはなかった。
視線を向ければ何時の間にか眠りについており、微かに寝息をたてていた。
ローは苦笑するとユーリに布団を掛けてやり再び読書に戻った。
遥か昔に滅んだ故郷がユーリの力で蘇ろうとしている。
それは嬉しいという気持ちよりも、不安の気持ちのほうが大きかった。
彼女は自分の命を顧みない一面がある。
だからどうが、何事もなく終わって欲しかった。