第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
二人は小さな宿屋を見つけると、まず風呂に入り冷えた体を温めた。
その後風呂から上がると、夕食が広間に用意されているようだった。
二人は指定された場所に行き席につくと、鍋が置いてあった。
そして戦いの火蓋が切って落とされたのだ。
「てめぇ、肉ばっか取り過ぎだろ。鍋の中が野菜だらけになるじゃねぇか」
「いやいやローも肉めっちゃ取ってるじゃん。ちゃんと野菜食べないと健康に悪いよ。目の下の隈が酷くなる」
何やら言い争いながら鍋を食している二人を、他の宿泊客達は遠目で見ていた。
最初こそ穏やかに会話していたように見えたが、鍋が煮えてくると光の速さで動き出した。主に女性のほうが。
「これは元からだ。つか人に鍋を任せて何食わぬ顔で食ってんじゃねぇよ。自分で入れろ」
「いやーこの鍋は美味しいなぁ。身も心も温まる。……あっ肉貰い」
「…無視とはいい度胸じゃねぇか。どんだけ食い意地が張ってるんだよ」
言い争っている内容自体はどうでもいいのだが、二人が食べている量に問題があったので余計に周りから注目を受けていた。
積まれていく皿の数に宿屋の主人の顔も青ざめている。
ほとんどはローが食べているのだが、ユーリが肉を集中攻撃をしてくるので皿の数が余計に増えてしまったのだ。
「いやー腹一杯になった。後は食後のデザートだな」
「腹一杯の意味分かって言ってんのか」
「私の腹には別腹というものがありましてね…」
そして2人はの争いは結局決着がつかないまま、腹が満たされたので終わりを迎えた。
さっきまで争っていたかと思えば何やら楽しそうに話しながら部屋に帰っていく二人を見て、周りの人も首を傾げたのだった。